10年来のお付き合いをさせていただいているお客様から、ある日、封書が届いた。
別の土地に滞在されたときのことをまとめた、滞在記である。
店に足をお運びいただいた際に、昨年2か月ばかり、ある地方へ滞在されていたこと、その経緯などを聞かせていただき、そのとき見たことや感じたことなどを、札幌に戻ってから主にご家族のために滞在記としてまとめられたということを知った。
そこで、私はわがままなお願いをしていたのだ。
もし可能であれば、ぜひそれを読ませていただきたいと。
ご家族のためにしたためられたものを読ませて欲しいとは、なんとも図々しいお願い。
しかし、なんと、私の不躾なお願いに応えてくださったのだ!
感激した。
ネットで地図を開きながら、何度もくりかえし読んだ。
訪れた史跡や寺社が写真つきで、歴史的な背景とともにていねいに説明されており、ところどころに北海道とは全く違う生活環境を覗かせるエピソードも書かれている。何よりもご家族へ対する尊敬や愛情が随所ににじまれていて、読んでいてとても温かい気持ちになったし、心洗われるような気がした。
滞在されることにした理由も素敵(ここには書けない!)だけれど、戻ってからそれをこうしてまとめるなんて、なんて豊かな時間の使い方だろう。
憧れる。
たびたび達筆で、温かい言葉をつづった葉書をいただくこともあり、若輩者の礼儀知らず(しかも字も汚い)が手紙を書くには大層勇気がいったが、この感激と感謝をどうしてもお伝えしたく、ペンをとった。
その際には、昨年入手した万年筆のペン先を洗い、コンバーターとインクを入れ替えて心を整えてから臨んだ。常識を知らないので、非礼があったかもしれない。にもかかわらず、海外のご友人からいただいたという素敵な絵葉書でまた温かい言葉をいただいた。
いただいた滞在記は大事に保管している。
もう少し年を重ねたときに読み返すと、また感じ入るところがありそうだ。